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短編の冒頭部分の試し読みができます。
2022年7月現在、短編80話以上、中長編15シリーズ以上の小説があります。
文章の無断転載は禁止です。

Yellow

今日は昼間は晴れ、だけど、夕方からは雨予報。
夜から翌朝にかけて暴風雨になると、今朝のニュースで言っていた。
電車も止まってしまうかもしれない。
だから、天気が悪くなる前に、さっさと帰るはずだった。

なのに。
退勤時間が近づくにつれ、どんどんと仕事を頼まれる。
みんな早く帰りたいのはわかるけど。
私だって早く帰りたい。
半泣きになりながらパソコンに向かい、必死で仕事を終わらせた。

(『いつか晴れた日に』より)

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Pink

私の恋人は、美しい。
肌は透き通るように白く、手足はすらっと長い。
私なんて、彼より年上、背は低いし、お尻は大きい。ぽっちゃりしてると言えば聞こえはいいが、それって太ってるってことじゃない?
そんな自分と恋人が並んでも、カップルだと思う人なんていないだろう。

だけど、彼は私のことを世界で一番可愛いと言ってくれる。

(『世界で一番』より)

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Blue

私のベッドで寝るこの男は、私の彼氏でも何でもない。
今日も今日とて酔っぱらって押しかけてきただけの友達。
いや、正確には友達ですらないかもしれない。
彼にとって私は、ただの「先輩の元カノ」。

元カノといっても、高校の頃の話だし、そんな昔の恋愛なんて子供のお遊びだ。
私の大学受験が近づいて勉強が忙しくなると、別々の高校に通っていた彼氏とは会う機会も減り、ほとんど自然消滅のように別れた。

(『先輩の元カノ』より)

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Black

週明けは仕事がたまってて残業になりがちだ。
金曜の退勤後から月曜の朝までの週末中に入ってたメール対応で午前中が終わってしまうときもある。
今日も3時間の残業だった。
雪がちらつく中、とぼとぼと駅からアパートまでの道を歩く。
明日の朝は雪が積もっているかもしれない。
少し早起きして、ブーツを履いて出勤しよう。
カイロも必要かもしれない。

そう思いながら歩いていると、スマホがメッセージの着信を知らせる。

(『一緒に住もう』より)

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Red

雨の日のデートは、嫌いじゃない。
背の高い彼は、私の肩にぐるっと腕を回して傘をさす。
晴れの日よりもずっと距離が近くて嬉しくなる。

会社の福利厚生で映画館のペア割引券をもらっていたのをすっかり忘れていた。
今日はちょうど観たい映画があるという彼と映画デートだ。

(『雨の日、映画館で』より)

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Green

ざあざあと雨が降る中、私は傘もささずにバッグを抱きしめて走っていた。
定時で退勤すればよかったものを、あと少しだけやって帰ろうと思ったのが運の尽きだった。
昼間は雲ひとつなく晴れていたのに、空はあっという間に黒い雲に覆われ、駅までの道中で降り出してしまった。
申し訳ないと思いながらも、行きつけのバーの軒先で雨宿りさせてもらい、ハンカチを取り出して髪と顔を軽く拭く。

(『カクテル』より)

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